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スティーブ・マックイーンの最後から二番目の映画「トム・ホーン」

「トム・ホーン」というのは西部劇の映画です。また、スティーブ・マックイーンが演じたトム・ホーンという主人公は、実在の人物でした。アメリカのインディアン戦争の頃に、斥候として騎兵隊と共に活動し、アパッチ族の酋長であったジェロニモを逮捕に導いたことでも有名でした。しかし、インディアン戦争が収束したあとでは、仕事もなかったので、もちまえの射撃の腕を買われて牛泥棒の監視役として地主たちに雇われました。そこで、大活躍をしたわけです。ある面で一匹狼にようなトム・ホーンの姿を、スティーブ・マックイーンは実によく演じています。スタントマンを使うのを嫌った彼は、乗馬も上手だったトム・ホーンの生き写しのように、荒馬を乗りこなしています。しかし、あまりにもたくさんの牛泥棒を射殺したことで、地主たちに疎まれるようになったトム・ホーンは、罠にはまり、少年射殺の嫌疑をかけられ、有罪となりました。映画の最後は、実際にそうであったように、トム・ホーンが絞首刑にされる場面でした。しかし、驚く事には、その年には、スティーブ・マックイーン自身も癌で死んでいるという事です、つまり、1980年にリリースされた映画の制作時に、スティーブ・マックイーンは自らの死と、トム・ホーンの死を二重写しにしながら必死に演技していたという事です。わたしたちの一般的な考えでは、スティーブ・マックイーンという役者は、「パピヨン」とか「大脱走」、「荒野の七人」などで知られた反体制的なヒーローです。しかし、スティーブ・マックイーン自身の生い立ちを調べてみると、子供の頃の彼の家庭は悲惨なものでした。母親の離婚と度重なる再婚によって、次々と変わる義父から酷い暴力を受けたり、親戚の家に送られたりしました。反社会的な性格のスティーブ・マックイーンは、次々と微罪を犯して逮捕され、最後には少年院のような更生施設で成長したわけです。成人して海兵隊に入ってから彼の行動は少し変化し、除隊後には演技の勉強を初めて、役者への道を歩み始めたわけです。役者としての彼の生き方は大成功を収めました。おそらく、1970年代という時代的な要請というものもあったのでしょう。反体制的でありながら、純粋に生きようともする彼の姿勢が多くの人に受け入れられたわけです。そして、多くの苦難を経てきた彼の面構えは、まさにヒーローと呼ぶべきものでした。このヒーローと、西部劇時代のヒーローのトム・ホーンが重ね合わさった時が、彼の最後の時でもありました。死期を悟った彼は、福音派のキリスト教に改宗したそうです(もとはカトリック)。そして、死の前には福音派の有名な牧師であったビーリー・グラハムが彼にあっています。そして、スティーブ・マックイーンの死の年にリリースされたのが、この悲劇の英雄「トム・ホーン」の映画だったのです。イギリスの詩人バイロンは、FACT IS STRANGER THAN FICTUON.(事実は小説よりも奇なり)という言葉を残しています。それはまさに、スティーブ・マックイーンが演じたトム・ホーンだったと思いました。それだけではありません。50歳で死去する前に改修した彼の姿は、日本の戦国大名だった大友宗麟を想起させます。大殿宗麟はキリシタンでしたが、親族たちに対しても血みどろの戦いを実行しました。しかし、人生の最後には宣教師に見守られて息を引き取ったのです。キリシタンの宣教師がローマに送った書簡が今も残されており、そこには「大友宗麟は聖者のごとく逝けり」と書かれているそうです。スティーブ・マックイーンも大友宗麟も社会的に見れば、「暴れ者」あるいは「無法者」だった訳ですが、神の絶対愛は彼らもけっして見放すことはなかったわけです。スティーブ・マックイーンの遺作ともいえる「トム・ホーン」を見て、わたし自身も人生の最後について考えさせられました。みなさんはいかがでしょうか。

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