阿耨多羅三藐三菩提という言葉が、般若経にあります。わたしが高校生の頃、臨済宗のお寺にお世話になって夏休みを座禅して過ごしたときに、故柳瀬友禅老師から学んだ悟りに関する教えです。これは、「あのくたらさんみゃくさんぼだい」と読みます。その意味は「この上なく、正しく真実な、完全な悟り」ということです。この世にどんなことが起こっても、この悟りがある限り、不動の思いが持続すると思われます。これを、わたしが聖書から学んだ宗教のコペルニクス的地動説から観察しますと、興味深いことがわかります。それは、解脱であり、自己を滅却することでもあるのです。イエス様は、個人の正しさを強調するユダヤ教から離れ、自分の敬虔さではなく、神の無条件の絶対愛に人々の心を向けました。自分ではなく神だと実感できるときに、「この上なく、正しく真実な、完全な悟り」が実現するのです。それは、原初宗教改革ではなかったでしょうか。わたしたちは、宗教の差異をこえて、この原点に戻る必要があるのではないかと思います。