王妃となったカミラ夫人への評価
エリザベス女王の死去によって息子のチャールズ皇太子が国王となりました。チャールズ皇太子と言えば、ダイアナ妃のことなどが思い出されます。そして、若くて美人だったダイアナ妃よりも、チャールズ皇太子が年上の既婚者であったカミラ夫人を愛したことも意外なことでした。ただし、これら三者についての資料を読みますと、カミラ夫人ばかりを悪く言えない気もしてきます。実に、人間の評価というものは相対的なものであることがわかります。それを典型的に表しているのが旧約聖書です。ダビデ王に始まるイスラエルの王朝の記事を残しているものに、列王記と歴代誌があります。そして、この二つの書物は、イスラエル王朝の別の時期を記載しているのではなく、同じ時期を別の視点から書いているのです。例えば、ダビデ王の子であるソロモン王についての記事を見てみましょう。時代的にも先に書かれたと考えられている列王記には、「彼には妻たち、すなわち700人の王妃と300人の側室がいた。この妻たちが彼の心を迷わせた。ソロモンが老境に入ったとき、彼女たちは王の心を迷わせ、他の神々に向かわせた」と書かれています。つまり、ダビデ王朝の衰退の原因はソロモン王の不信仰にあったと厳しく述べているわけです。では、歴代誌はどうでしょうか。「神はソロモンに言われた。『あなたはこのことを望み、富も、財宝も、名誉も、宿敵の命も求めず、わたしがあなたをその王として立てた民を裁くために、知恵と識見を求めたのだから、あなたに知恵と識見が授けられる。またわたしは富と財宝、名誉もあなたに与える。あなたのような王はかつていたことがなく、またこれからもいない。』」つまり、神がソロモンを絶賛したと書かれているのです。実際の歴史を見れば、列王記が指摘したように、異国の妻たちに影響されて偶像礼拝を行ってしまったソロモンの失敗によってダビデ王朝が滅亡していったとも考えられます。しかし、ダビデ王朝のあとの捕囚が終わって、人々が帰国してから書かれた歴代誌は、ソロモンに対しては好意的です。おそらく、ダビデ王、ソロモン王と続く王国の創始者たちにたいして感謝の念を抱いていたのでしょう。さて、ここでイギリスの王朝について考えてみましょう。偉大な指導者であったエリザベス女王でしたが、家庭内ではどうだったのでしょうか。チャールズ王は皇太子時代に、「自分は母親に抱きしめられたことがない」と述懐したことがあるそうです。そんなこともあって、母性的なカミラ夫人を好きになってしまったのかもしれません。ダイアナ妃とは趣味や好みも違い、性格は合わなかったそうです。ただ、わたしたち遠くの国にいる者には真相はわかりません。何世代か先になって、イギリス王朝の「列王記や歴代誌」が書かれるならば、わたしたちは公平な眼で物事を判断することができるかもしれません。そうしたことに、示唆を与えてくれる聖書の記事はすばらしいなと思います。新約聖書も同じです。四つの福音書があるおかげで、わたしたちは偏った見方から救われています。カミラ夫人(イギリス王妃)への評価にもそのような視点が与えられるといいですね。