閑話休題

人が生きる意味は何か

これは「オー・ゴッド」という映画に出て来る神への質問の一つです。主演はシンガーソングライターのジョン・デンバーです。後に彼が飛行機事故で亡くなったことを考えると、まさに、預言のような言葉が散在しているのに驚かされます。そして、個人への神の出現を信じようとしない神学教授や宗教指導者たちで構成される諮問委員会が出した、古代アラム語で書かれた50の質問の一つがこれでした。つまり、神が語りかけない限り、普通の人には読めないし答えられないという設定なのです。「人が生きる意味は何か。」これは、コロナのもたらす社会的試練に悩むわたしたちには関心のある質問です。映画の中での答えは、「自分がどういう意味を求めるかで決まる」というものでした。これは字幕に翻訳された答えですが、実際の英語は非常に複雑でした。The very existence means exactly and precisely not more or not one tiny bit less just what they think it means. I think that's counted it all. 字幕の訳は簡潔に要点を宣べることに成功していると思います。興味深い英文でしたので脚本の作家が誰なのかを調べてみました。それは、「クレーマー・クレーマー」の種本を書いたエイブリー・コーマンという人でした。彼の作品は、お笑いの中に社会変革を起こすようなメッセージを織り交ぜた手法であり、実際に、「クレーマー・クレーマー」の後には離婚裁判時における親権についての考え方は変わったそうです。「オー・ゴッド」の中に見られる社会変革の赤い糸もこれだと思いました。そこには宗教という組織化・利害化された団体思考への懐疑と、個人が体験する超越的存在のリアリティーとの対比が描かれています。映画のことに戻りますが、わたしたちが求める人生の意味は、わたしたちが既に決めているわけです。そして、神は人間に自由を与え、それを自分で決めることを許しているのです。他者がプレッシャーをかけて変えさせることもできないし、神さえもそれに手を付けることはなく、100パーセントあなたの自由ですよと言われているわけです。その神の答えに対して、ジョン・デンバーが、「哲学だ」と答えていますが、ここでは、「profound」と言っているのですから、「奥深い」とか「深遠な答えだ」とした方が良かったかもしれません。飛行機事故で亡くなったジョン・デンバーも、父親が空軍の優秀なパイロットでしたから、飛行という事に人生の特別な意味合いを感じていたことでしょう。ですから、空に生き、空に死ぬことは、彼にとって無意味ではなかったはずです。わたしたちも、自覚しているか自覚していないかにかかわらず、胸の中に秘められた人生の意味を求めているのです。それが生きる意味です。最後になりますが、「オー・ゴッド」(神よ!)という英語の表現は、とてつもなく驚いた時に発する言葉です。そして、これは映画の伏線だと思いますが、自分で決めているのに、まだ自分が知らない人生の意味を発見した時に、まさに「オー・ゴッド」なのです(笑)。

 

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