閑話休題

トランプ氏よりも強いソーシアルメディアの力

大統領選の敗北を認めようとしないトランプ氏の、フェイスブックやツイッターのアカウントが停止されました。もっともといえばもっともです。社会に害を及ぼすような情報発信は規制されて当然です。ただ、一部の弁護士たちは、これを人権に対する侵害と考えています。そして、ソーシアルメディアが大統領以上の影響力を行使することに懸念を表明しています。(日本はまだまだ忖度の世界ですから権力者は安全です。)このことも、当然と言えば当然です。一方が当然で、他方が当然であるときに、現代社会が陥っている深刻な自己矛盾を感じないではおれません。メディアの自由か、人権尊重か。旧約聖書を見ますと、忖度なしで、情報発信していた人々がいました。勿論、古代社会ですから、99パーセントの人々は権威に絶対服従していたのです。社会の権力者に忖度せずに、情報発信していたのはイザヤ、エレミヤ、エリヤなどの預言者たちです。それらの一人、預言者ナタンは、ダビデ王の女性関係を叱責しました(サムエル記下12章1節以下)。彼は殺されませんでしたが、権威を批判することは死を覚悟しなければできなかったことです。日本でも同じようなことがありました。妻の実家はホーリネス系のクリスチャンでしたし、祖父は牧師でした。戦時中に、誰もが天皇の御真影を拝み礼儀を尽くしていた時に、祖父は「神でないものを神として拝むわけにはいかない」という、今で考えれば当然なことを唱えたがゆえに投獄されました。獄死ではありませんでしたが、出獄してまもなく死亡しました。日本にも忖度しない人々はいたわけです。わたしの尊敬する、公害闘争をおこした田中正造も、忖度せず、時の天皇に直訴しました。現代のソーシアルメディアが忖度しないのは、まるで古代の預言者のようです。(ちなみに、日本のメディアにはまだ忖度が濃厚です。原発事故の時にも、外国のメディアは東京も汚染されていると報道していました。)ただ、ソーシアルメディアが大統領以上の影響力を行使して、勝手にアカウントを停止したら、これも情報統制ではないかという疑念がわくのです。これに対する、解決はあるのでしょうか。あります。資本主義の原理である自由競争です。資本主義社会では、どんなに忖度しても、不良品は市場から駆逐されます。独裁国家ではそうなりません。世界のソーシアルメディアはまだまだ、寡占状態ですが、これがもっと増えてくれば、悪質なものは自然選択によって駆逐されるでしょう。そう願いたいものです。

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