大友良英とノイズ・ミュージック
ラジオの深夜放送を聞いていて、大友良英という人のことを知りました。番組の内容は、大震災と、被災地で彼が主催したコンサートの事でした。特に気になったのは、彼がメディアを鵜吞みにせず、自分の眼で現場を確かめてみないと気が済まない性格だと言っていたことでした。翌日、大友良英を検索して調べてみたら、この人は、ドラマ「あまちゃん」や「しもべい」の音楽担当のミュージシャンでした。ただ、彼は普通のミュージシャンとは違っていました。専門が、ノイズ(雑音)・ミュージックだからです。そういえば、「あまちゃん」の主題歌にあったザワザワした音も、ノイズ・ミュージックのなせる業だったのでしょう。ミュージックはわたしの専門ではありませんが、教会礼拝には音楽が欠かせません。この音楽の原点は、中世の礼拝音楽になりますし、その前は、イスラエルの礼拝音楽です。わたしがエルサレムに住んでいた時には、毎週土曜日にはユダヤ人会堂の礼拝に出席していました。そこで聞いた、歌う詩編朗読は特に素晴らしかったです。ちなみに、ヘブライ語の聖書の詩編には、歌唱用の記号がついていますので、古代からも歌われていたと思います。これが、ヨーロッパに伝わって、グレゴリアン賛歌などになったのでしょう。それにしても、音楽の基本は、コード進行(和音の変化)だと思っていました。ところが、ノイズ・ミュージックを聞いてみると違うのです。まさに雑音です。では、雑音は音楽になるのでしょうか。実は、なるのです。自分の古い記憶を辿ると、英語の聖書の詩編に「ノイズ」という言葉があったと思いだしました。それは、詩編66:1と詩編100:1でした。日本語の新共同訳聖書では、どちらも、「喜びの叫びをあげよ」となっています。どうも日本文化は、物事を綺麗に問題なく表現しやすいようです。しかし、英語では、「MAKE A JOYFUL NOISE」となっていて、確かにノイズと書かれているのです。これは、どちらが正しいのでしょうか。それには原典のヘブライ語聖書の詩編を見てみるしかありません。わたしは、ヘブライ語の専門家でもないので、正確な事は言えませんが、そこには、HRYAUとあります。最初のHは冠詞のようなものですから、意味上では除外できると思います。そして、ヘブライ語は子音中心の言語ですから、YとかUなどの母音は除外して考えるといいと思います。そして、残るものはRとA(ヘブライ語のアインであって母音ではない)になります。すると、これは有名な詩編23編4節にあるRAであり、「災いを恐れず」の部分と一致します。つまり、RとAの組み合わせは、何か心地よくないことを意味しているのです。だから、騒音なのです。わめきの言葉かもしれません。ただ、これは、嬉しくて叫ぶ騒音のことなのです。これで、謎が解けました。そして、ノイズ・ミュージックも、「あまちゃん」の主題歌に出て来るように、胸がドキドキするような思いが伝われば、音楽としての働きを十分にしていることでしょう。なぜなら、音楽とは、ドキドキしながら音を楽しむことだからです。