アーノルド・シュワルツェネッガー氏が9分の動画をSNSに投稿して、ロシアの人々に停戦を訴えました。彼の動画には説得力がありました。おそらく、ロシアの人々も驚きをもって、この世界的な有名人の訴えに耳を傾けた事でしょう。彼のメッセージの優れた点がいくつかあります。第一に、彼はロシア人に対する自分の愛と敬意を表明していることです。これは、説得には重要なことです。学校の先生などが生徒の指導に失敗するのはこの点です。愛や敬意もなく、上から目線で、規則を振りかざすならば、相手の心を硬化させるだけです。シュワルツェネッガー氏は違います。若いころ、ロシアのアスリートに抱いた尊敬とあこがれを細かく伝えています。これによって、ロシア人の良心に訴えているわけです。第二に、シュワルツェネッガー氏は侵略戦争の罪悪を指摘します。しかし、ロシアのウクライナ侵攻のことからは始めません。自分の父親が、ナチス・ドイツの兵士として、ロシアに攻め込んだ失敗談から説いています。そして、その失敗が長い間、肉体的な痛みと精神的な痛みを生んだことも告白しています。相手を直接非難するのではなく、自分の肉親の過ちを具体例として、その是非を問いかけているのです。第三に、シュワルツェネッガー氏は、この戦争が一部の政治家によってもたらされたものであって、一般の人々は真実を知らされていないと伝えています。これは現代のSNSが一般民衆に報道の自由を享受させる優れた手段であることを確認させるものです。シュワルツェネッガー氏が今回取った行動そのものが、SNSによる情報自由化、反独裁政治の手段としての機能を顕著にあらわしています。過去には、独裁者が情報を掌握し、さらに情報をコントロールして民衆を誤った方向に導いたり、洗脳したりしてきました。現在では、SNSの登場によってそれが難しくなってきています。また、メッセージの最後に、彼は戦争反対の勇敢な行動をしているロシアの人々に「神のご加護がありますように」と結んでいます。シュワルツェネッガー氏といえば、バトルの多い娯楽映画の俳優のような印象が強くありますが、彼も強い信仰心を持っているのだと感じました。最後になりますが、旧約聖書を読むと、古代社会の預言者たちは、王の独裁や情報操作に対して、神の与えた真実をかかげて孤高の戦いを挑んでいたことがわかります。