たまたまユーチューブ動画を見ていたら、アメリカの銃愛好家が自分で射撃中に起こった銃身爆発事故のことを本人が報告しているビデオがありました。その内容が、安倍元首相の銃撃による怪我に似ているので少し驚きました。この人は超大口径のライフル銃の試射実験をしていましたが、銃身がまだ熱いうちに次の薬きょうを装填したので、火薬が銃の中で爆発したわけです。破裂した銃の部品は顔や体に飛び散りました。目の方に当たった重い鉄の部品は、保安ゴーグルをつけていたため、失明には至らず、眼窩の数か所の骨折で済みました。しかし、頸部を貫通した部品は経静脈を切ってしましました。普通なら、数分で出血死するところでしょう。ところが、この銃愛好家は以前に警察官であったこともあり、銃による怪我についての応急処置の訓練をうけていました。首に空いた穴には自分の指を突っ込んで、それを顎できつく抑えて止血したのです。それだけではなく、呼吸を意識的に遅くしました。呼吸が早いと心臓が早く動き、出血が多くなるからだそうです。そして、この人は、近くにいた父親に自動車で病院に運んでもらって一命をとりとめました。安倍元首相の場合はどうだったでしょうか。おそらく、警護に立っていた警察官は、アメリカの警察官の様に、銃による怪我の場合の応急処置に関する知識が乏しかったのだと思います。彼らは、犯人を逮捕することしか頭になかったように見えます。被害者の保護をするのも警察官の役割ではないでしょうか。消防や救急車任せでは手遅れになります。報道画面では細かいことはわかりませんが、銃弾によってできた穴を何かでふさいで止血したのでしょうか。指でもよかったと思います。さらに、看護師を呼び集め、心臓マッサージを懸命にしていましたが、あれは逆効果だったのではないでしょうか。外傷のない心筋梗塞などにはAEDや心臓マッサージが役立っても、出血しているときには、かえって大量出血に導いたと思います。傷があるのだから、体の血を押し出しているようなものだからです。簡単に言えば、穴の開いた風船です。穴が開いてないなら、そこに圧力をかけて膨らます方法はアリでしょう。ところが、銃創という穴が開いているのに、風船のような身体を何度も圧迫するのは、素人が考えても危険です。たとえ心肺停止だったとしても、できるだけ安静にして止血し、病院で蘇生作業をすれば助かったのではないでしょうか。しかし、この種の怪我に対する知識が少なかったことこそが致命傷だったと思います。アメリカ人の適切な処置と、その説明を聞いて、これが理解できました。安倍元首相への救命処置の誤りについては、誰もが忖度していて、何も語られないでしょう。とても残念なことです。警護のやり方にしても、救命処置にしても、日本は世界の優れた方法に目を向けるべきだと思いました。最後に、一言。わたしが40年ほど前に出会った、あるベトナム帰還兵は、頭の三分の一を砲弾で吹き飛ばされていて、三角形の頭でした。ところが、優れた救命処置で助かり社会復帰していました。一方、日本の外科医療技術は40年前のアメリカの水準までも達していないことを知っている人は多くないでしょう。日本が一番だと過信しているからです。聖書にはこう書いてあります。「聡明な心は知恵を求め、愚か者の口は無知を友とする。」(箴言15章14節)昔の日本には、聡明な指導者が多くいましたが、いまでは、原因と結果の関連さえ把握できない人が多くなりました。目の前の結果だけ見て、一喜一憂しているのも残念なことです。「しかし、わたしは顧みた。この手の業、労苦の結果のひとつひとつを。見よ、どれも空しく、風を追うようなことことであった。太陽の下に、益となるなるものは何もない。」(コヘレトの言葉2章11節)