閑話休題

筒井康隆氏のひとりごと

筒井康隆氏はもうすぐ90歳になるらしいです。その独り言のようなものがネットに掲載されていました。読みだすとつい面白くて、最後まで読んでしまいました。彼は小説家ですが、ある種の思想家だと思いました。それも、現在の日本では、絶滅危惧種の部類に入ると思います。わたし自身も、ルーテル教会の牧師の中では、絶滅危惧種に近い存在だと思います。ただ、こうして記事を書いていること自体は、まだ絶滅していない証しなのでしょう。筒井康隆氏のことに戻りますが、彼の独自性は、その反社会性にあると思います。反社会性といっても、暴力的な破壊活動ではなく、社会の大部分の人が是と言っても、自分だけ非ととなえる勇気を持っているということです。わたし自身の考えでは、そういう人がいた方が、社会の健全性は保たれると思います。筒井氏は、「時代遅れの大阪万博なんてやめたらいい」と言っています。また、「みんな真面目すぎるんだよなあ。不良っぽいところがないというか。だから色気がないんだよ」とか、「LGBTだって言葉に何か実感が湧かないんで、同性愛なんて平気で書いてますけど」と語っています。これを読んで、わたしは聖書の言葉を思い出しました。それは、イエス様の将来を心配した弟子のペトロが叱られた時の言葉です。「サタン、引き下がれ。あなたは神のことを思わず、人間のことを思っている。」(マルコ福音書8章33節)イエス様は、人間同士が多数決で決めたことや、少数の権力者がきめたことが、必ずしも真理ではないことを熟知していたのだと思います。筒井康隆氏はまるで旧約聖書に登場する預言者たちのように、自由に発言しているところが興味深いと思いました。現代のような管理社会では、彼と同じようなことを若い世代の人が発言したら、きっと排除されてしまうことでしょう。神のことを思わず、人間の思いを絶対視する社会だからです。これは、個人の信仰生活でも同じことであり、古今東西、宗教の極意を極めた人々は、自分の気持ち以外の究極の一点に集中していたと思います。わたしたちも、「私はこう思う」から、「神はどう思うだろうか」に思考転換できたら素晴らしいことです。聖書ではそれを、聖霊の働きと呼んでいます。受胎告知のときのマリアの讃歌がそれです。

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