閑話休題

眠れない夜のために

このようなご時世ですから、不眠症の人も多いのではないでしょうか。わたしの青年時代には、ブロバリンという睡眠薬が流行しました。太宰治が睡眠薬での自殺未遂をしたときに使った薬もブロバリンですが、当時はカルモチンと呼ばれていたそうです。昨今の睡眠薬は、副作用も少なく、名前も睡眠導入剤とか入眠剤とも呼ばれていますね。ブロバリンとは比較にならないくらい安全です。しかし、わたしが若いころには安全でない薬に人気がありました。わたしも人生に疲れ、自殺しようかと思った時に、ブロバリン100錠入りの瓶を買ったことがあります。一気に飲むのが怖くて、30錠ぐらい飲んでみましたが、意識が希薄になっただけで死にはしませんでした。ネットで医者の診断記録を調べてみますと、ブロバリン140錠を一気に飲んで死ななかった人もいたようです。30錠などは子供の遊びのようなものですが、体質によっては死ぬことも十分に考えられます。ただ、そうした危険な薬は当時でも入手困難でしたが、現在はゆるやかな薬が用いられるようになっているのは嬉しいことです。しかし、時代は変わっても、死にたい人や、眠れない人の数にそれほどの変化はないのではないでしょうか。自殺願望については、その人の価値観がかわれば自然消滅すると思います。ただ、精神を病んでいる場合には、全人格的な癒しや、周囲の社会環境の改善が必要かと思います。不眠症も、それ自体では死に至る病ではないにしても、当事者にとってはさぞかし苦しい事でしょう。夜が来るのが怖いと思います。わたし自身は不眠症になったこともなく、いつも安眠しています。ただ、誰でもそうだと思いますが、心配事があると眠りにくいですね。これは、わたしが経験的に習得した方法ですか、眠る際には、明日のことやこれからの計画は考えないことにしています。聖書にも、「明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である」(マタイ福音書6章34節)、と書いてあります。このキリストの教えによって、どれほど救われているかわかりません。眠りたい時には、昔は羊が一匹、羊が二匹などと数える方法がありました(笑)。わたしの方法は簡単です。まだ見ぬ将来に意識を向けるのではなく、過去の出来事を詳しく思い出してみるのです。これは脳に負担をかけるので、眠くなります。あまり眠くならなくても、勉強のことなどに集中すれば学習効果も上がりますので時間が無駄になりません。六法全書や難解な学問にチャレンジすれば、即、睡眠状態に入ります。脳って不思議なものですね。また、眠れない夜のための究極の薬は、ブロバリンでも睡眠導入剤でもなく、神にすべてをお任せする信仰心ではないでしょうか。聖書にこう書いてあります。「よく聞きなさい。『今日か明日、これこれの町へ行って一年間滞在し、商売をして金もうけをしよう』と言う人たち、あなたがたには自分の命がどうなるか、明日のことはわからないのです。あなた方は、わずかの間現れて、やがて消えて行く霧にすぎません。むしろ、あなたがたは、『主の御心であれば、生き永らえて、あのことやこのことをしよう』と言うべきです。」(ヤコブの手紙4章13節以下参照)いま、方丈記を読んでいますが、人間て本当に霧や露に等しいんだナと思っています。このつかの間の命を、感謝して生きたいものですね。眠れない夜のための、一言アドバイスでした。

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