書評

和田虫象著「きっついお仕事」鉄人社 2020年

2020/07/30

今回は違ったジャンルの本を読んでみました。これは、作者自身が体験した様々な仕事の記事から19種を厳選して出版したものだそうです。コンビニで売っていたのでつい買ってしまいました。軽い読み物ですし、違った世界が次々と展開するので、飽きることがないです。ユーモアが満載されていて、一人で読んでいても笑ってしまい、他の人から見たら不気味に見えるかもしれません。コロナで自宅にいる時には楽しい読み物です。そういうわたしも、母子家庭で育ちましたから、小学校5年生の頃から新聞配達のアルバイトをして、お小遣いの不足分を補っていました。というか、他の子供より金持ちでした(笑)。家は貧乏で生活保護を受けていましたが、自分は金に困ったことはありません。中学校を卒業したあとは、工事現場や工場で働いたり、高校時代は早朝の牛乳配達をしていました。大学になると、更に職種は増え、ビル清掃、コック見習い、ウェイター、池袋のキャバレーの清掃、大井競馬場警備員、葬儀屋、デパートの弁当販売、水道屋、等々数多くです。アメリカに留学した際も、留学生が学外で働くことは法律で禁じられていましたが、広いキャンパスの構内で、トラクターに乗って芝刈り、チェーンソーを使って樹林の伐採、壁紙張り、ペンキ塗り、床のワックスがけ、冬期除雪作業(冬の外気温は零下20度だった)、カーペット洗浄、庭園の植木剪定などをおこないました。辛かったのは、背丈が2メートル以上の外人学生と、日本のシャベルの三倍くらいの大きさのシャベルで、一緒に穴掘りすることでした。これじゃ~戦争に負けるヨナ、と思ったことでした。そういえば、アメリカの病院でドクターの補助をして、患者の聞き取りをしたこともありました。まあ、そんな経験がありますので、和田さんの本を読みながら、昔の自分に重ねあわせてしまったわけです。ただ、付記しておくと、和田さんのアルバイトは本の企画の為ですから、わたしのように長期間やったわけではなく、数日間とか数週間にすぎません。それにしても、コロナの昨今、わたしたちにとって仕事とは何かということを考えさせられる本でした。聖書では、労働の特別な定義はありませんが、エデンの園での原罪発生(禁断の実を食べた)の後、「お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ」(創世記3章17節)という神の語りかけをアダムは聞いています。ここだけ読むと、労働は神の罰であり、苦役のようです。実際に古代社会で、上流の人は労働せず、労働は奴隷の任務でした。これは、笑い話のようですが、アメリカで5年くらいの留学生活を終えて日本に帰って来た時に、受けた強い印象は、満員電車の通勤が、あたかも17世紀のアメリカの奴隷船のように見えたことです。こんな奴隷社会状況で誰も文句を言わないのが不思議でした。アメリカでは、どんな労働の時も、「DON'T WORK TOO HARD!」(頑張りすぎるな)がお互いの挨拶でした。さて、さっきの創世記に戻りますが、なんと、エデンの園を追放される前のアダムには、「神は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた」(創世記2章15節)、という語りかけがありますから、苦役ではなかったはずです。労働は人間に対する神の守護の一環だったと思います。ただ、人間の心が悪くなり、辛い、苦しい、空しいなどと感じるようになったのでしょうか。でも、確かに、積水のプラスチック工場で、一日8時間、プラスチック成型のバリを取り除くアルバイトをした時は辛かったです。皆さんはどうですか、「きっついお仕事」を楽しんでいますか。そんな時にも、「DON'T WORK TOO HARD!」を忘れないでくださいね。

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