調布の地盤陥没は典型的な人災
外環道の工事に伴って、調布で地盤陥没が起きています。わたしはこうした建築関係の専門家ではないのですが、素人でも、トンネルを掘るためのシールド工法の問題点を検索してみれば、なんとなく原因が見えてきます。地下何十メートルもの深さの工事ですから、住民の方たちは安心していたと思います。ところが敷地や道路が次々と陥没していったのです。絶対安全だと言われたのに、安全ではなかったというのは、原発事故も同じではないでしょうか。特にシールド工事の専門家は、地下水の事を問題にしています。子供の頃に誰でも砂山にトンネルを掘った経験があると思います。あれが、岩山なら、それ自体が丈夫ですから陥没することもないでしょう。しかし、関東平野の地面の下は柔らかい堆積層に過ぎません。ここを掘るのですから砂山のようなものです。ただ、問題は地下水です。東日本大震災の時の液状化現象を覚えている方も多い事でしょう。普段はしっかりした地盤のようでも、その中には驚くほどの水分が含まれているものです。それが、激しく揺れることによって分離し、表面にまで上がってくるわけです。逆の現象がトンネル工事では起こったと言えるでしょう。つまり、地下水の抜水です。シールド工事をすれば、どうしても出てきた地下水は排水しなければなりません。けれども、液状化しやすい場所ではなくても、地層には地下水が多量に含まれているものです。わたしがイスラエルにいた時には、砂漠のような土地でも、地下には水脈があると教えてもらったことがあります。それは、年間降水量が20ミリ程度の場所です。まして、日本のような雨の多い地域では、地下の地層は水をいっぱいに吸ったスポンジのようなものでしょう。そこを排水しながら、トンネルを掘っていくわけです。水を失った地層は収縮し、下降していくはずです。特に、今回に陥没した土地は、もともとは川が流れていた谷底のような場所で、それに蓋をして暗渠にした地域です。表面は他の地域と変わりがなくても、地下には相当量の水が蓄えられていたはずです。そこを掘れば、地中の水がなくなるのは自明の事です。同じことを高尾山周辺で見たことがあります。自然が保護された高尾山地域の真下に圏央道のトンネル工事をするときには、たくさんの議論がおこりました。しかし、自然被害を最小限にするということで、都市の利便性を優先して、トンネルは完成しました。誰もがトンネルの害を考えないようになりました。ところがそうではありません。高尾山に隣接する八王子山では、それまで山の清水が流れていた小渓は、枯れた岩だらけのくぼみになってしまいました。ここの地下は堆積層ではなく岩盤です。それでも地下にトンネルを掘ることによって地中の水はなくなったのです。やはり、人災です。調布の場合にも、もっと地質調査をしっかり行ってできなかったのでしょうか。聖書を見ると、イエス・キリストの言葉として、「砂の上に家を建てると、災害の際に倒れ方がひどい」(マタイ福音書7章26節参照)と教えられてれています。それだけではありません。歴史上では、もっと古い時代に、人類は巨大なバベルの塔を築きました。彼らの合言葉は、「さあ、天まで届く塔のある町を建て、有名になろう」でした。しかし、彼らの計画も途中で失敗しました。災害を通して、神様はわたしたちにどのような教訓を与えておられるのでしょうか。