マーク・スティーブンス著、「ハーバードAMPのマネジメント」、早川書房
久しぶりに、経営学の書を読んでみました。聖書学とは無関係のようですが、そうでもありません。学問の対象が、人間なので、その特性を分析することは興味のあることです。特に、この本の著者は、ハーバード・ビジネス・スクールの関係者ですから、経営の世界のオリンピック優勝者の一人のような人物です。そのビジネススクールのなかでも、AMPという上級経営講座は、9週間の集中学習で知られています。一日の勉強量は14時間だそうです。そして、期間内に250のケース・スタディーから学びます。難関であるビジネス・スクールの一般コースでさえ、年間600のケース・スタディーですから、その過酷さは想像を絶するものです。わたし自身も、アメリカの神学校で学んだ時に、各コースの読書課題を合計すると一週間に1500頁でした。そして、読むだけではなく、それに関するレポートも提出しなければなりません。アメリカの学習方法は量から質への転換を意図したものだと感じました。著者は、AMPが成立した背景を書いています。それは、第二次世界大戦中に、アメリカがドイツの航空戦力に脅威を感じたからでした。その頃、ドイツは月間4千機の航空機を生産していました。アメリカははるかに立ち遅れていました。そこで、年間5万機の航空機生産を目標にしました。そして、国家全体の生産性を向上させるためにハーバード大学にAMPを創設し、有能な産業指導者を育成し目標を達成したのです。生産というハードな面を実現する前に、指導者育成というソフトな面を達成する必要を認識していたわけです。日本が敗戦に追い込まれたのは、国家にそのような合理性が欠けていたからでしょう。聖書にも、「二万の兵を率いて進軍してくる敵を、自分の一万の兵で迎え撃つことができるかどうか、まず腰をすえて考えてみないだろうか。」(ルカ福音書14章31節)と書かれています。イエス様は、この例話を通して、人生の決断の厳しさを教えています。第二次世界大戦全の日本軍と米軍の違いを考えると、精神的な鍛練や規則の厳しさは日本軍が上だったでしょう。しかし、先の航空機生産の例にも明らかなように、現実の兵力分析では、米軍の方がはるかに優れていました。戦う前から、勝敗は決まっていたのです。イエス・キリストは、弟子たちに、自分の財産を処分して、背水の陣で従ってくるように教えました。それが、イエス・キリスト流のこの世の悪との戦いの方法だったのです。