閑話休題

異質なものに優しい文化を築く

「グランド・ジャーニー」というフランス映画をみました。これは、14歳の少年がノルウェーの北極圏からフランスの湿地帯まで、エンジン付きのハンググライダーで、絶滅危惧種のカリガネガンに安全な飛行経路を教えるために一緒に飛ぶ話です。実話に基づいた映画だそうです。映画の感想コメントの多くは、空からの景色の雄大さや少年の勇気などに関するものでした。しかし、わたしは、少年がアッカと名付けた一羽のカオジロ雁のことが気になりました。鳥は、卵からかえって雛になった時に最初に見たものを親だと思うそうです。カリガネ雁のなかの一羽であったアッカを、少年は特にかわいがっていました。わたしも小学生の時に、巣から落ちた雀のひなを育てたことがあります。ピーコと命名しました。きっとピーコもわたしのことを親だと思っていたのでしょうね。成長して飛べるようになったので野生に返しましたが、ピーコと呼ぶと野外から家の中に飛んできて掌の上で餌を食べました。家の近くで工事があってからは近寄らなくなりましたが、翌年には家族をつれて家の近くの家にきました。名前を呼ぶと答えていました。鳥にも記憶力があるんだなとおもいました。それはともかく、映画の主人公である少年トマも、一種の変わり者であるアッカを可愛がっていました。北極圏から帰還する空の旅も厳しいものでしたが、トマは軽飛行機のあとについて飛んでくる雁の群れの中にアッカの姿が見えないと、とても不安になっていました。映画を見てわかったのは、アッカけでなくトマも変わり者であり、この飛行計画を実行したトマのお父さんも変わり者だったということです。変わり者たちが常識では考えられないことを達成したストーリーでした。映画評の中でも、常識派の人々は、トマの行動を批判していました。しかし、どうでしょうか。聖書を読むと、イエス・キリストという人物も、規律を重んじるユダヤ人社会の中で変わり者だったことがわかります。そして、イエス・キリストを異端児として十字架につけて処刑したのも、「常識派」の人々でした。常識派の人々は、異質なものに冷酷だなと改めて思いました。日本にも、ユダヤ人社会に似て、常識派の人々が数多くいますが、その人たちにも変わり者を温かい気持ちで受け入れる心の広さを持ってほしいものです。それはできないことではないでしょう。日本の歴史を見ても、織田信長や坂本龍馬は変わり者だったからです。

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