子供の頃にはラジオで民謡を聞くのが好きでした。ただ、よく聞いてみると、日本の民謡はどれも歌い方が似ています。これは謎でした。しかし、この謎が解けました。北前船です。江戸時代に、北海道の昆布やその他の産物を載せて日本全国をまわった北前船が北方の労働歌や食文化を伝えたのです。ですから、子供の頃に聞いた盆踊りの曲も、元をたどれば同じものだった訳です。この事を考えると興味深いものです。聖書の世界にも似た現象があります。それは写本です。聖書のオリジナルというか、初版本というか、なんといってもよいのですが、原典というものは存在しません。現存している古代の写本は、すべてコピーです。ですが、さすがに聖書学者は頭が良くて、これらのモザイクのかけらに等しい写本の断片を比較研究して、ほぼ原書に近い形を作り上げたのです。それが現在わたしたちが使っている聖書です。同じ手法を用いれば、日本の様々な民謡を研究して、オリジナルとなった北前船のもたらした歌をつきとめることもできるでしょう。同じように、人類の起源も、わたしたちという写本に近い現存人類の特徴と遺伝子の共通点を分析していけば、アダムとイブにたどり着くかもしれません。