ロシアの密造酒事件と自然メタノール
ウオッカなどの強いお酒が好きな事で知られるロシアで、密造酒事件が起こりました。同じアルコールでも毒物に属するメタノールが混合された酒を飲んだ住民64人が中毒症状、そして32人が死亡しました。残念なことです。わたしも、ロシアに旅行した知人からお土産として、アルコール度数が60度以上のウオッカをいただいたことがあります。知人は、瓶ごと冷凍庫に入れて冷やしてから飲んでくださいと言いました。何しろ、度数が高いので、冷凍庫に入れても凍りません。冷却すると、すこし水あめのようなトロミがつきます。これを小さなグラスに入れて飲むと、喉を通過するときに火が燃えるような特殊な感覚があります。おそらく、お酒に強いロシア人は、こうした強い刺激を好むのでしょう。しかし、それにしても、通常の酒類のエタノールではなく、毒物のメタノールまで混ぜて飲むとは信じがたいことです。ただ、調べてみると、こうしたメタノールは自然にも野菜や果実に微量に含まれているそうです。そこで思い出しました。もうだいぶ前のことですが、ある知人が、腐る直前くらいのナシがおいしいと言っていました。不思議に思いました。自分は新鮮なナシしか食べません。しかし、今回わかりました。腐る直前のナシガおいしい理由は、微量ですが果実が熟成してメタノールが発生しているからでしょう。まあ、こうした酒類については、戦争中に東南アジアの島に駐屯していた兵士たちが、ココナツの果実液で酒を造ったことも知られています。あれにも、メタノールが少量含まれていたかもしれません。果実ですから。聖書でも、酒に由来する逸話が見られます。あまりよくないものとしては、ロトの例があります。神の導きによって、ソドムとゴモラの滅亡から、危機一髪で逃げだしたロトと娘たちは、山の中に隠れ住むことになりました。子孫が絶えることを恐れた娘たちは父親のロトにぶどう酒を飲ませました。「父親は、娘が寝に来たのも立ち去ったのも気がつかなかった。このようにして、ロトの二人の娘は父の子を身ごもり、やがて姉は男の子を産み、モアブ(父親より)と名付けた。」(創世記19章35節以下)ぶどう酒を常飲しているしているユダヤ人が泥酔するはずもなく、ここでも少量の自然発生メタノールが混入されていたのかもしれません。お酒に限らず、さまざまな危険が身近なところにある、ということを教えられます。